とある板前さんのお話。
尊敬する大先輩の板前さんがいます。
御年、64歳。
原液、いやいや現役バリバリで魚をさばき、寿司を握り、
時に氷細工を作ります。
東京の割烹料理屋で働いているときに出会いました。
そのお方は、熊本出身。
若いころ、好きな女性を追いかけ
そのまま上京。。。
やりたい事もなく、ふとしたキッカケでホテルの料理見習いに…
それからウン十年…
いろいろなお店を任された後、
最後のお店。と、やってきた親方と、
僕はそこで出会いました。
その働く姿は、
長年の熟練された技と味。
スピーディで無駄がなく、
正確で丁寧で、見ていて美しい。
バーテンダーとはまた一味違う、
カウンターの華のようでした。
その仕事姿に僕はいつも見とれていたものです。
あの、大根のかつら剥きを見せてあげたい!!!
職人技とはまさしくああいうことを言うんですね。
お酒と煙草とバイクをこよなく愛し、
こんな下っ端の僕を、よく夜中まで飲みに連れて行ってくれ、
酔っ払ってカラオケに行っては
いつも【八代亜紀】を歌ってくれました。
しかし、どんなに遅くまで飲んでも
次の日の仕事には、誰よりも早く出勤し、
仕込みをしていたのです。
この人の何処にこんなパワーがあるのか
不思議でならなかったです。
今思えば、あれは親方のサービスマンとしての
プライドと誇りだったのでしょう。
親方は誰よりもお客様の声に敏感でしたから。
どんな無理な注文にも『ノー』を言った事はありません。
その姿は一緒に働く誰もが尊敬していました。
サービスマンとして見習いたい、と今でも深く思います。
寒くなってきたこの季節。
親方の飲んでいた焼酎が、
水割りからお湯割りに変わる頃。。
ふと、そんな大先輩の事を思い出しました。
乾杯しに行かなきゃな。。。
タイトル【親方の酒】